Nishida Koji ブログアーカイブ

No.111 「こだわりからの卒業と授かりもの ~その3~」

hitorigoto

「授かりもの」は、母のお腹の中でスクスクと成長していった。

母は、己の身体の変化にときに苦しみながらも、授かりものへの対話を続けた。
父は、そんな母の変化を見守り、精一杯の愛情を妻と授かりものに注いだ。
授かりものは、胎動というかたちで、父母の愛情に応え続けた。

父は、その瞬間(とき)を見逃したくないと、出産予定日前後の20日間、一切の仕事を断っていた。
今か今かとその瞬間(とき)を待ちわびた。
しかし、授かりものは、そんな父の想いを知ってか知らずか、母のお腹の中に留まり続けた。
子供の仕事は、親をやきもきさせること。そして、子供は親の思い通りにはならないこと。
授かりものは、早くもそのことを父と母に教えているかのようだった。

父がその瞬間(とき)に立ち会えなくなる日の前日、授かりものは意を決し降り始めた。
そして夕刻、その世に大きな産声をあげた。

その瞬間(とき)に立ち会い、母と授かりものの想像を絶する共同作業に接した父に、言葉はなかった。
ただただ、妻を労い、授かりものを愛おしく感じた。

父と母は、新たな命の誕生を喜ぶと共に、ある感情が湧き起こっていた。
それは、同じ思いをして産んでくれたお互いの母への感謝の気持ちだった。
父と母は、お互いの偉大なる母を、これまで以上に敬愛し、大切にすることを心に誓った。

授かりものは、産声をあげたその日から、計り知れない多くのことを気付かせ学ばせてくれている。

また一人、大切な「学び子」が増えた。

2008年11月
#111 こだわりからの卒業と授かりもの ~その3~