Nishida Koji ブログアーカイブ

No.107 「高校生の感想から」

hitorigoto

私の講演を聴いてくれた一高校生の感想を、本人の許可を得てここに掲載する。
生命を考える一助となれば幸いである。

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私はこの講演で「生命」について考えさせられました。
私の祖母は昨年の秋に亡くなりました。
祖母はガンを患っていて、人工透析も約20年間受けていました。
祖母は私が遊びに行くといつも笑っていて、色々と話をしてくれる優しい人でした。
だから私は、今でも祖母の「死」を何となく信じられません。
「また来るからね。」そう言ったときの祖母の優しそうな顔が、瞼の裏に焼きついています。

祖母からみた娘、つまり私の母は、私が一歳のときに亡くなりました。祖母と同じ肺ガンでした。
祖母の病気が分かってから、祖母は自分のこと、そして母のことを私たち姉妹に話してくれました。
祖母の小さかったころの話、結婚したときの話、母が生まれたときの話、そして母が亡くなったときの話。
まるで一つの歴史のようでした。

祖母は長い月日をかけて全てを話し終えると、私たちに一つ問題を出しました。
「人はどんなときに死ぬと思う?」
一瞬意味が分かりませんでした。心臓が止まれば全てが終わると考えていたからです。
祖母は少し笑ってから言いました。
「人はね、病気になったって、事故に遭ったって、いくら歳をとったって死なないんだよ。
じゃあ、どんなときだと思う?」
「それは人に忘れられたときだよ。たった一人でも覚えていてくれたら、その人は“生き続ける”んだよ。」

しばらく言葉が出ませんでした。祖母は死を恐れていないように見えました。
祖母は今から別の世界へ行って母と一緒に過ごすのか、そう考えると気持ちが楽になりました。

私は祖母が亡くなった今でも、祖母は“生きている”のだと信じています。
私が、私を含めた周りの人々が祖母を覚えている限り、祖母はここではない別の世界で私たちの心の中で生きているから。
だから、私は今ここで祖母に最期に言うことができなかった一言を言いたいと思います。
「おばあちゃん、いってらっしゃい。」

2008年7月
#107 高校生の感想から