Nishida Koji ブログアーカイブ

No.105 「思いもかけない贈り物」

hitorigoto

先日、拙ゼミナール卒業生の中国人・李遠から私宛に荷物が届いた。本人から何も連絡がなかったので、大学院時代に書き上げた修士論文か研究ノート、あるいは推薦状の依頼文書かな、などと思いながら封を切ってみると、思いがけないものが手紙と共に入っていた。

手紙にはこう記してあった。
「生まれて初めての初給料です。今までお世話になったことの感謝を込め、本来なら直接お伺いしてこれまでのお礼を申し上げるところですが、どうぞ文書での非礼をお許しください。心ばかりのものですが、これからの季節にお使いくださると有難く思います。」
綺麗に包装された箱の中には、私の大好きな色・スカイブルーのハンカチが入っていた。

今月、中国の国家主席・胡錦涛氏が来日した。
胡主席がまず行ったのは、日中友好に尽力した日本側関係者の家族らと面会だった。
そこで、
喫水不忘[手穴乙]井人
:水を飲む人は井戸を掘った人を忘れない
を引用しながら謝意を表したというニュースが流れた。
これは中華人民共和国の建国の父とされている毛沢東主席の故事である。中国人留学生によると、小学1年生で以下のように学ぶそうだ。

瑞金城外有個小村子叫沙洲[土霸]。毛主席在江西領導革命的時候,在那兒住過。
:瑞金の郊外には沙州[土霸]という名前の小さい村があります。
毛主席が江西で革命を指導している頃、その辺りに住んでおられました。
村子裡沒有井,喫水要到很遠的地方去挑。毛主席就帯領戰士和郷親們[手穴乙]了一口井。
:村には井戸がありませんでしたので、水を飲むためには、とても遠いところまで行って
汲まねばなりません。そこで、毛主席は革命戦士と村人たちを連れて、井戸を一つ掘りました。
解放以後,郷親們在井旁邊立了一塊石碑,上面刻著:“喫水不忘[手穴乙]井人,時刻想念毛主席。”

:解放以後、村人達は、井戸のそばに石碑を一つ立て、その上に刻みました。
「水を飲む人は井戸を掘った人を忘れない、絶えず毛主席を懐かしく思う。」と。

「初任給が出たらどんな小さなものでもいいから、ご両親にプレゼントするんだよ。」
卒業を控えたゼミ生たちに毎年言い続けている言葉である。
ご両親こそが井戸を掘った人たちだからだ。

これまで卒業生たちからは、申し訳ないほど様々な贈り物を頂戴してきた。しかし、このような贈り物をいただくとは思いもしなかった。

先日神戸での講演で、早速ハンカチを使わせていただいた。
五月晴れの太陽に照らされたスカイブルーは光り輝き、そこから李遠の笑顔が映し出された。  謝謝

2008年5月
#105 思いもかけない贈り物