Nishida Koji ブログアーカイブ

No.67 「健太へ」

hitorigoto

おそらく君の人生の中で、最もつらい経験だろう。当然だね。これまで一度も経験したことのないことだから。

君と出逢ったのは、成田空港だった。2年間の海外赴任を経て帰国したその日に、僕は始めて君を抱きかかえた。
なんて可愛いのだろう。なんて愛しいのだろう。
あの感動は、今でも鮮明に胸に焼き付いている。

あれから17年。君は高校を卒業する歳にまで成長した。両親の愛、家族の愛をたっぷりと受けて育った君。その優しさは母親から、謙虚さと努力家のところは父親から、君はしっかりと受け継いだ。叔父さん自慢の甥に成長した。

そんな自慢の君が大きな壁にぶつかった。こんなことをいうと、君は憤慨するかもしれないけど、叔父さんは、よかったなって思っているんだ。もちろん残念な気持ちも拭いきれないけどね。

君は小さいときから勉強ができた。いや、できたというよりも、よく勉強をしてきた。その努力は常に結果として表れてきた。これまで君が受けてきた試験と名の付くものは、全戦全勝。そう、君は勝つことしか経験してこなかった。

「俺、東大に入る」
物心がついた頃から、言っていたね。叔父さんは、「大学選びはイメージじゃ駄目だ。しっかりと中身を吟味しなきゃ」って君に苦言を呈してきたけど、君の中での「東大ブランド」は膨らむばかりだった。

そして今回、君は初めて「負け」を経験した。

健太、今の気持ちをしっかりと胸に刻むんだ。勝つ人間がいる裏には、必ず負ける人間がいる。人が人になるためには、この気持ちをしっかりと汲み取れるようにならなきゃいけない。
そして、こんなことで挫けちゃ駄目だ。人生は、負けることがたくさんある。それを乗り越えていく力をつけることが大切なんだ。

壁を乗り越えることこそが、人生の醍醐味なのだから。

来春、祝杯を挙げようぜ!

2005年3月
#067 健太へ